記憶

確かに大切なモノを持っていた筈なのに…。失くしてしまった。何処へいったの?どうなってしまったの?誰かに壊されたの?どうして…何を失くしてしまったんだろう。私の大切なモノはなんだった?私は…だれだったっけ…?

私は目を開けると、見知らぬ部屋にいた。暗い部屋で、どこからか漏れる月明かりが薄暗い光を投げかけている。部屋の壁には青く光るモニターがあるだけで、他には何もない。私は不安になり、頭の中を思い返す。

「私は誰だったっけ…?」

記憶が曖昧で、自分の名前や過去の出来事が思い出せない。ただ、何か大切なモノを失くしたことだけは確かだ。それが何なのか、どうして失くしてしまったのか、全くわからない。

不安に駆られた私は、部屋を出て外に出ようとするが、ドアはどうやっても開かない。私は力を込めてドアを叩き、叫び声を上げるが、誰も応えてくれない。絶望感が胸を締め付ける。

しばらくして、部屋のモニターが突然光り出した。私は驚きながらも、モニターに映し出される映像を見つめた。そこには私の姿が映っていた。しかし、私の顔は無表情で、虚ろな瞳が写っている。

「私は…何者なんだろう?」

モニターに映る自分の姿に戸惑いながらも、私は自分の存在を確かめるために、身体を触ってみる。しかし、何も感じない。まるで、私は実体を持たない存在のようだ。

絶望感と疑問が私を襲い、泣き出してしまった。私はただただ、大切なモノを失くしたことに対する悔しさと、自分の存在意義に対する迷いに苦しんでいた。

モニターの映像が変わり、今度は何も映っていない真っ白な画面が現れた。その中心に、ひとのつ言葉が浮かび上がっている。

「記憶」

私はその言葉に目を奪われる。そこには私が失くした大切なモノがあるのだと感じた。記憶が私の存在の一部であり、私を私たらしめているものなのだと。

私は再び部屋のドアを叩き始める。必死に叫び声を上げ、記憶を取り戻すために闘い続けた。やがて、ドアが開き、私は外の世界に解放された。

感覚が戻り、風が私の肌をなぞる。私は深呼吸をして、自分の存在を再確認した。記憶を失った絶望感がまだ残っているが、私は前に進む決意をする。

「私は誰だったっけ…?私は私を見つけるために、この世界を旅するんだ。」

私は自分の旅の始まりを感じながら、闇の中へと歩き出すのだった。

終わり