私は眠い目を擦りながらも、リビングへと向かった。
「おはよう〜…」と声をかけるが、誰もいない。おかしい。いつもなら母が「もっと早く起きなさい」とか「ご飯出来てるわよ」とか言いながら顔を出すのに。父もいない。どうして。
今日は早くに出る日だったんだろうか。
混乱しながらも、私はキッチンへと足を運んだ。すると、そこには普段なら母が立っている場所に、ただの人形が立っていた。
「うわっ!」私は驚きの声を上げ、後ずさりした。
その人形は、母のそっくりさんのようだった。しかし、何かが違う。人形の目が不気味に光っているように見えたし、口元には不気味な笑みが浮かんでいる。
「これは…母の人形?なんでこんなものが…」
私は不思議な気持ちでその人形を見つめていた。心のどこかで、この人形が普段の母と入れ替わっているのではないかという疑念が生まれていた。
「でも、そんなことありえないよね…」
私は自分自身に言い聞かせるようにつぶやいたが、不安は拭いきれなかった。
母の人形を見ながら、私の中には不気味な予感が広がっていく。この人形は何者なのか、そして何を目的としているのか。
私は決意を固め、母の人形を捨てることにした。ただし、捨てる前に一度だけ、人形に声をかけることにした。
「もし、本当に母の人形だとしたら、お願いがあるんだけど…」
私は固い決意を込めて言葉を続けた。
「もし、本当に母の人形だとしたら、元の母に戻ってほしい。そして、私たち家族として普通の生活ができるようになってほしいんだ。」
私の言葉が届くかどうかわからないが、少なくとも私は自分の気持ちを伝えることができた。
そして、私は母の人形を包んでゴミ箱へと投げ捨てた。その瞬間、不気味な予感が一瞬だけ強くなったような気がしたが、すぐに消え去った。
私は深呼吸をして、リビングへと戻った。
すると、そこには普段通り、母が立っていた。
「おはよう、お母さん。」
私は安堵の笑顔を浮かべながら、母に声をかけた。
母も微笑みながら、私に返事をした。
「おはよう、まなみ。ご飯出来てるわよ。」
私は心の中でほっとしながら、普通の生活が戻ってきたことを感じた。
あの不気味な人形の出現は、いったい何だったのだろうか。今はもう気にしないことにしよう。
私たち家族は、この不思議な出来事を乗り越え、幸せな日々を過ごすことができるのだろうか。
あの時の不気味な予感は気のせいだったのだ。
きっと気のせいだ…。