私はいつものように公園に遊びに行った。大きな木の後ろにある小さなトンネルをくぐり、桜の庵に向かって走っていく。その庵に住んでいるのは、2本の角を生やした男の人だ。
彼の名前はジロウ。いつも優しい笑顔を浮かべている。私は彼に会うたびに、不思議な記憶がよみがえるのだ。それは私がまだ幼い頃に彼と一緒に遊んでいた記憶。
久しぶりに行った公園で、ある日、ジロウは私に話しかけてきた。
「おい、元気かい? 久しぶりだな。」
私は凄く驚いた。何故ならジロウさんと逢うのはとても久しぶりだからだ。どうしてか、嬉しさが胸に広がるのを感じた。
「元気ですよ。久しぶりですね。」
彼は微笑みながら言った。
「そうか、元気で何よりだ。最近はどんなことをしているんだい?」
私は考え込んでしまった。
「うーん、最近は特に何もしていないかな。ただ、この公園に来ることが多いです。」
ジロウさんは頷きながら言った。
「そうか、この公園はいい場所だからな。昔、君と一緒によく遊んだもんだ。」
私は驚きながらも、興味津々で尋ねた。
「一緒に?私たちは昔一緒に遊んだことがあるんですか?」
ジロウはにっこり笑って言った。
「そうだよ。君がまだ幼かった頃、この庵でよく一緒に遊んだんだ。でも、あの頃のことは忘れてしまったんだろうね。」
私は戸惑いながらも、何故かジロウの言葉が真実であると思った。
「でも、どうして私はそのことを覚えていないんでしょうか?」
ジロウは考え込んだ後、ゆっくりと言葉を紡いだ。「それはね、君がこの庵の中に入った時に、特別な力が働いたからだよ。君の記憶が一部封印されてしまったんだ。」
私は驚きながらも、ジロウさんの言葉に疑問を抱かずにはいられなかった。
「特別な力? それってどういうことなんですか?」
ジロウは穏やかな表情で語り始めた。
「この庵には、不思議な力が宿っているんだ。人々の記憶を封印し、新たな記憶を与えるんだよ。」
私は目を見開きながら、ジロウさんの言葉を受け止めることができなかった。
「なぜ私の記憶を封印する必要があったんですか?」
ジロウは何とも言えないような複雑な顔をしながら深いため息をついた。
「それは君がこの庵に入ると、それまでの幸せな記憶が封じられてしまうからだ。この庵は、人々に幸せを与える代わりに、彼らの幸せな記憶を奪ってしまうんだよ。」
私は言葉に詰まりながらも、ジロウさんの言葉に心を揺さぶられた。
「でも、私はジロウさんとの思い出を覚えていないけど、あなたと過ごすこの今の時間が幸せだと感じるんです。」
ジロウは優しく微笑みながら言った。
「君が私と過ごす時間が幸せだと感じるのは、君の心が真実を感じ取っているからだよ。幸せとは、思い出に縛られることではなく、今を大切にすることなんだ。」
私はその言葉を聞いて涙がこぼれ落ちた。
「ジロウさん、ありがとう。私は今を大切にすることを覚えました。」
ジロウさんは優しく微笑みながら言った。
「いつでも君のことを応援しているよ。だから、いつでもここに来てほしい。いろんな話をしよう。」
私はジロウさんの言葉に感謝しながら、彼との時間を大切にすることを心に誓ったのだった。
その日から、私はジロウさんとの思い出を覚えていなくても、彼との時間を楽しむことができるようになった。幸せな思い出を封印されてしまった私だが、ジロウさんは私に新たな幸せを与えてくれたのだ。
そしてその庵の中で過ごす時間は、私にとって特別なものとなった。ジロウさんとの交流を通じて、私は幸せを感じることの真の意味を学んだのだった。
この庵の中には、不思議な力が宿っている。それは、人々の記憶を封印し、新たな幸せを与える力だ。私はジロウとの出会いを通じて、その力の真実を知ることができたのだった。